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隠れオタクな管理人の日常を適当に書いた普通の日記。
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いきなりですが。
たまにはこんなんも。

 ショートケーキ;スポンジケーキの台に、果物とホイップクリームをあしらったケーキ。
        果物は定番としては苺が用いられるが(「苺ショート」)、季節や店により、メロンや桃など、バリエーションに富む。
        生クリームも、時としてチョコを入れたクリームを用いる。(「チョコ生ショートケーキ」)
 
 



 
 
 
Pâtisserie Le diable 〜春〜
 


 
 
 
 
「『ショートケーキ』っていうくらいだから、『ロングケーキ』があるのかしらって思ったの」
 
「それで、本屋さんで調べたのよ。子供の頃って、まだネットが無かったから、足で調べるしかなくて」
 
「で、諸説あることが分かったのよ。そもそも『ショート』は、『短い』っていう意味の『ショート』じゃないってこと」
 
「『もろい』『壊れやすい』っていう意味とか、『日持ちしない』っていう意味からきてるとか」
 
 
「けど、それって、ショートケーキだけじゃなくて、他のケーキにも言えるわよね?」
 
 
 
「それで。調べているうちに、思ったのよ。『由来が沢山あるのは良くわかったわ。けど、』」
 
「・・・待て。一度落ち着け」
 
 
姉崎まもりは、熱弁をふるっていた。
チェーン店系の喫茶店の中、右手は紅茶のカップに、左手は一言毎に言葉に合わせて揺れている。
 
今年から、大学2年になる。
通っている女子大の帰りに、最近知り合った男と、この店で待ち合わせ、一方的な会話量の多いお茶をしていた。
 
目の前で、彼女の話を心底かったるそうに聞く男は、決して彼女の恋人などでは無い。
会えばいつも、この手合いのスイーツに関する演説を聴かされる、それだけの関係だ。
とりあえず、男はそう思っている。
 
 
「何度も言うが。何度目だったか忘れた。数えきれねぇほど口すっぱくして言ってきたつもりだが、もう一度言う。」
 
「うん」
「俺は、甘臭ぇモンが嫌いだ」
 
「知ってるわよ」
 
「テメエの口から、甘ったりぃ話以外を聞いたことが無ぇが」
「仕様がないじゃない。私は甘いものが大好きなんだから」
 
 
「私だって、ヒル魔君がケーキ食べてたら、物凄くミスマッチだと思うわよ。絵的に」
「オイ、誰が『ヒル魔君』だ」
「だって、同い年なんでしょ。いいじゃない、『君』で」
 
目の前の男の格好は、今日も奇妙だった。
見事な金髪の髪は毛先が全て重力に逆らって生えており、
春先で大分暖かくなってきたというのに、全身、黒。黒いタートルに黒いパンツ、黒い革靴、黒い薄手のコート。
 
白いブラウスと小花のスカートに茶色のブーツを履いたまもりと向かい合わせで座っているからか、店内で余計に浮いている。
 
 
 
「ブラックコーヒーしか飲んでないんだから、いいじゃない。話くらいは甘くても」
「意味がわかんねぇ。つうか、テメエの話を聞いてると、珈琲に砂糖混ぜられたような気がしてきやがる」
「そんな楽しみ方もありかもね。甘い話をつまみながら紅茶を飲む、ダイエットにいいかも」
「テメエ、この期におよんで、『ダイエット』なる単語が出てくるたぁな・・・」
「だって。今日まだケーキ食べてないし」
 
と、
そこでハッとなるまもり。
 
 
「そうよ、ケーキ!さっきの話の続き」
「まだ話す気か・・・」
「途中だったもの。ショートケーキ、由来はどうでもいいって思ったの。だって、由来はどうあれ、現在の私達の頭に浮かぶのは、定番の、あの、スポンジ+生クリーム+苺、の、8割型が三角形のあのケーキなんだもの。カットしたケーキだから『ショートケーキ』って思っちゃうじゃない」
 
「だから、『ロングケーキ』はあっていいと思うの」
「・・・」
 
 
閣下。
そろそろその演説を終えて下さい。
 
 
「・・・『ホールケーキ』で、いいんじゃねぇのか」
「夢を壊すようなことを言わないで!」
 
「・・・」
 
『夢』ときた。
 
 
「長くなきゃ。やっぱり、長く」
「ロールケーキみてぇなアレを言ってんのか・・・?」
「そう!横長!でも斜めに包丁を入れて分割すると、一個一個は、あの一般的な形のショートケーキになるの」
 
キラキラキラキラ、目を輝かせて高らかと叫ぶ女。
男は、うんざりと、一応、答えの分かっている質問をした。
 
 
「それで、テメエは、それがあったら、どうだっつうんだ」
 
「勿論。食べるの!ロングのまま」
 
 
あーハイハイ、
お会計ここに置いてオキマスネ、と、
男は抗議を諦めて、席を立ち上がる。
 
 
「あ、ちょっと・・・どこ行くの」
「帰る」
「まだいいじゃない」
「良かねぇ。つうかテメエは何なんだ毎度毎度。俺を呼び出しちゃ、奇妙奇天烈な甘ぇうんちくを披露して、勝手に完結させてお開き。こんな新手の嫌がらせは初めてだ」
 
「貴重な意見でしょ?」
「・・・何が」
 
イライラしてきた。
話が噛み合ない上に、何考えているかわからない上に、何かを勘違いしていやがる。
 
 
「いいか、二度と、その話はすんな。俺の前で、今後二度と、ショートだのロングだのを語るんじゃねぇ。分かったか」
「いいけど・・・」
 
返事を確認すると、男はさっさと店を出て行った。
 
けれどまもりは、
満足気に男の背中を見やる。
 
 
 
「夏になったら、フルーツタルトの話にするから」
 
 
 
 
 
 
外は、4時を過ぎたがまだ昼過ぎのように明るかった。
大分日が長くなってきたな、と、まもりは店を出てから一人、付近を散策する。
 
商店街を一つ抜け、住宅地に入ってわりとすぐのところ。
 
そこに、よく通っている小さい洋菓子屋があるのだが、
先ほど店に来るときは閉まっていた入り口が開いている。
 
 
「・・・」
 
 
さっき、あんな話をしたからか、欲求が湧いてくる。
頭に浮かぶは、スポンジケーキに甘くてきめ細やかな生クリーム、真っ赤な苺・・・
 
 
店をのぞくと、
常連の姿を見つけたオーナーに、一番奥の席に案内された。
 
 
 
「何になさいますか」
 
 
「ケーキセットで、ショートケーキと、ローズティーをお願いします」
「お待ち下さい」
 
 
住宅に囲まれて、景観はそこまで宜しくはない。
けれど、そんな立地を逆手にとった、薄暗くムードのある店内、
古くてセンスの良いアンティークや、飾られた装飾の控えめで上品な食器を眺めていると、時間を忘れる。
極上のパティシエというのは、ケーキだけでなく、つくり出す空間も一流なんだとまもりは思う。
 
 
ああ、そんな話を、今度またあの失礼な男に話してみようかしら、と、まもりが考えていると、早速紅茶とケーキが運ばれてきた。
 
 
 
 
「・・・!」
 
 
 
一口、口に運んで、
まもりは言葉を失った。
 
 
今まで、何度もこの店でケーキを食べているが、いつも驚きに包まれる。
 
なんてケーキだろう!
 
こんなショートケーキがあったなんて。
まさしくショートケーキなのに、食べたことのない完璧な味。
 
このスポンジの柔らかさ!
それを包み込む生クリームの何と上品なことか。
そして、やわらかで上品なとろっとした二つの味を、苺のキリっとした甘さと酸味が見事にまとめている。
 
 
「・・・」
 
「いかがですか?」
 
 
 
 
この店は、こじんまりとしている所為か、バイトを雇わない。
店のオーナーはパティシエであり、そして接客も同時にこなす。
 
時間帯的に他に客がいないこともあり、オーナーはケーキを運んでからその場でまもりの様子を見ていた。
 
 
「・・・おいしいわ」
 
悔しいけど。
 
 
「悔しいけど、今日も、美味しい」
 
「それはどうも」
 
 
オーナーはそれを聞いて一礼すると、
厨房へと去って行く。
 
 
「何で、貴方みたいな人にこんなに美味しいケーキが作れるのか、未だにさっぱりわからないけれど」
 
パティシエ帽から覗く、金色の髪。
 
「むしろ知れば知る程ひどい人間性で、しかも甘いものが大嫌いな人間に、何でこんな味がだせるのか、さっぱりわからないけれど」
 
 
 
 
「美味しい」
 
 
 
いつか分かるのだろうかその謎は。
まだまだこの男を知らないだけだろうか。
 
 
悔しいが、今日も完敗だ。
非の打ち所がどこにも無い。
自分の方が、甘いものにかける情熱も、興味も、遥かにこの男に勝っている筈なのに。
 
 
 
 
「来月からはロングケーキも始めますので」
 
 
 
 
 
「またお越し下さい」
 
 
 
振り返って男は白々しくそう言って、
黒いパティシエ服に身を包んだオーナーは、店の奥へと消えていった。




★★★

某さんと、パラレルを書くならキャラの職業は何かな、みたいな話をした時に、
自分、何故か頭に「ヒル魔は絶対パティシエ!」とギャグのような考えが浮かんでて。。。
例え自分の大嫌いで畑違いのものでも、完璧にこなしちゃうといい。
いきなりサイトにアップするのは何だか怖いので、先にここに。
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